キャリア教育の一環として、ダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下DID)のアテンドに「働くこと」について話してほしいというご依頼を受け、職場体験を控えた中学2年生200名に向けて、アテンドスタッフとして暗闇を案内している瀬戸(セトセット)が、「働くこと」「将来への考え方」について話をさせていただきました。
見えないからこそできること、できることを探し求めること
まずは自己紹介。セトセットは「僕を知ってもらいたい」とカバンからおもむろに、細長い笛を取り出しました。しんとした体流行の曲をアレンジした笛の音色に、生徒さん達も驚いた様子です。育館に、篠笛(しのぶえ)の音が響きます。サプライズの演奏が終わると、セトセットはこんな質問を投げかけました。
「事前に視覚障害者の疑似体験をしたそうですが、どう感じましたか?」
「視覚障害者でも就ける職業は何だと思いますか?」
生徒さんからは疑似体験について
「怖かった」「いろいろな事が難しく感じた」
そして職業に関しての質問には「演奏家。さっき笛を吹いていたから」
「ペットの仕事。見えないからこそ動物の気持ちを感じ取れそう」
など、積極的に手を挙げ、様々な意見が出されます。
そうした一つひとつの答えに対してうなずきながら、セトセットの話は「働く」という本題に入ります。
「自分の感性を活かして仕事をすることも選択肢の一つだと思います。先程言ってくれたように視覚障害を持った演奏家もいるし、DIDの案内人は普段目を使っていない僕だからこそできる職業です。さらに、僕は人を楽しませることが大好きです。だから、DIDで働くことは僕の幸せにもつながっています。自分はこれができる!ということを探し追い求めることも働くことにつながるかもしれないですね」
「一方で、大好きな笛を続け、夢を叶えるためにも働いています。趣味や夢のために仕事をすることも悪くはないと思っています」
一歩先が見えないのはこわいことではない、工夫次第で楽しくなる
でも、みんなの年齢では将来なんてまだ想像がつかないよね、と話を続けます。
「この先がわからないというのは、暗闇と似ていると思いませんか? 一歩先も見えないというのは、皆が疑似体験で感じてくれた通り、怖いですよね。そんな時、DIDでは、発信してもらうことを大切にしています。声を出すことで周りも助けてくれるし、一歩先が見えないからこそ出来てしまうこともある。工夫次第で楽しくなる。だから、将来について迷ったり分からないことがあれば、どんどん人に聞いてほしいと思います。もちろん夢があるのならチャレンジした方が良いし、迷うことがあるのなら人に聞いても良い、いろんなあり方があって良いと思います」
最後には生徒さんから自然と拍手が湧き上がりました。
松葉中学校のみなさん、ありがとうございました。
《生徒さんの感想》
- 最初はできないことが多くて大変そうだと思っていたけど、講演会で聞いた話ではとても前向きに話していて、出来ないことよりも出来ることを探して生活しているというのに感動しました。目が見えないから不便ではなく、目が見えないからこそ、耳で多くのことを感じとって、自分たちにはない発想をしていたのがすごかったです。
- 目がみえる、みえないと関係なく協力していくことはとても大切だと思った。自分がしたいと思ったことにまっすぐにチャレンジできるような人になりたいと思った。
- チャレンジすることの大切さを学びました。できると思ったらできる。この言葉が一番心に響いてきました。自分の技術や感性を大切にしたいです。