Case Studies事例

暗闇で「言葉」と「人のあたたかさ」の大切さを実感して、
自分の中にある課題に気づく研修

富士フイルムシステムサービス株式会社さま

執行役員 公共事業本部 本部長
石田教展様

公共事業本部 クラウド事業推進部 部長
浄弘(じょうぐ)知哉様

スタンダード 3時間30分ver.

ご利用:経営層・部長職
テーマ:ダイバーシティ

2023年3月に実施されたビジネス研修を、実際に体験したお二人に、研修のご感想と、研修で得たものを実際の業務にどう活かされているかについて伺いました。

事前情報はあまり入れずに、学び取るよりも体験するつもりで参加

――このビジネス研修を受けられる前、どのような研修だと思われていましたか?

石田様:「はじめは、ただ『暗闇の中で研修をする』という情報だけだったので、よくわからないというのが率直な思いでした。だから、座学のように何かを教えてもらうというよりも、その環境に身をおいて何を感じるかということだと思い、何かを学び取らねばという気負いもなく参加しました。実は経営チームの中にはダイアログ・イン・ザ・ダークの体験をしたことがある人もいて、『まずは行って、感じた方がいい』というアドバイスだけもらっていたので、興味はありました。」

浄弘様:「私も、7~8年くらい前にダイアログ・イン・ザ・ダークを体験したことがあるという社内の人から『とてもおもしろかった』と聞いていて、ダイアログ・イン・ザ・ダークの名称は記憶していました。今回、研修があると聞いて、どういう研修なのかということよりも、まずは行ってみたいという気持ちで、研修の参加を決めました。」

暗闇での体験で、「言葉の大切さ」と「人のあたたかさ」、自分の中にある「固定観念」に気づく

――実際に真っ暗闇を体験されたご感想を教えてください。

石田様
「ほんとに何も見えないですよね。白杖も初めて私は持ちましたし、怖いので人と離れたくないと感じ、アテンドの方に従いながら慎重に前に進みました。と同時に、不自由であるがゆえに、五感が研ぎ澄まされていくというか、いかに日常生活で視覚に頼っていたかと感じました。
そして、これまでいかに適切な言葉が使えていなかったかということがよくわかりました。丁寧に言葉を使わないと、もっと言葉を補わないと人には伝わらないんだなというのが、その後の学びにもつながっていくのですが、想定以上にコミュニケーションの大事さを感じました。さらに、相手を思いやるという大切さも。マネジメントという観点においては、言葉がベースとなる仕事なので、大事なことに気づきました。」

浄弘様:「今までこんなに視覚に頼っていたんだと実感し、最初はとても不安でした。だから、声をかけられたり、触れてもらうことが嬉しくて安心することだと感じました。大先輩から、『おーい大丈夫か』と声をかけてもらったりしたときに、そういう人の温かさを感じました。一方で、発言しないと暗闇の中だと『いない人』になってしまうということを強く感じました。

また、電車のシーンでは自分の中にある固定観念に気づきました。私がふだん乗っている電車のイメージと暗闇にあった電車が一致しなかったのです。きっと目で見たら電車だとすぐわかったんでしょうけど、その理解にたどり着くまでが非常に難しかった。自分の中に思い込みがあることがわかったし、固定観念がときほぐれていくのがすごく印象的でした。」

研修を受けて変化したのは、「対話の質を上げる」ことへの意識

――研修を経て、業務において実際に何か変化はありましたか?

浄弘様:「相手の立場に立って伝えるということを意識するようになりました。大事だというのは前からわかって意識してるつもりでしたが、相手が誰であっても、どの尺度で伝えればいいかを非常に考えるようになりました。報告事項をとっても、自分の考えや言葉だけで伝えないように、あらためて相手にどう伝えるのかということを、日々考えるようになりました。

これで通じているはずと思いこんでいると、わからないのはわからない人のせいだろうという感覚が起こってきたりします。他部門の人と話す時、技術者目線だけでは話が通じないまま物事が進んでしまうことがあります。同じ目的に向かって進まなくてはいけないのだから、そういう部分を取り払いたいです。」

――丁寧に言葉が伝えられると、業務がスムーズに進むというような具体的な変化はありますか?

石田様:「今の私には、様々な部署・部門からの報告が上がってくることと同時に、自分から発信するという、二つの役割があります。その中で対話の質を上げていかなくてはと思います。
報告される場合の対話の質を上げるのは、報告内容に対して『理解度を示す』ことが大切です。報告を上げてくる人は私がどこまで理解してるか不安に思いながら話しています。だから、『こういう理解でいいのか?』といった自分の理解度を示すことで、相手も伝え方を変えて伝えようとしてくれるようになります。『いや違います』とか『こういう補足情報があります』という反応があると、結果的にそれは対話の質が上がることに繋がるでしょう。

よくないのは、『うん』『はい』としか答えないために、理解を曖昧にしたまま対話が進むこと。報告者は理解されたと思う一方、私は大してわかってないというのでは意味がないことです。こうして対話の質を上げるような意識付けができました。

もうひとつ、今度は自分が発信する機会においての変化としては、発信した内容が受け取る相手によって理解が異ならない言葉選びをするようになりました。例えば方針でも会議の感想でも、同じことを伝えているはずなのにAさんとBさんでは違うように受け取られてしまうような伝え方をしないことです。
だから、自分が発信するメッセージや感想については、伝える前に自分で文字に起こしてみます。営業部門、開発、スタッフ部門、生産サポートなど、どの部門のメンバーが聞いても、『こういうことが言いたいんだろうな』とわかるようにするためです。頭で整理できていても、喋るときにはその10分の1ぐらいしか伝えられず、その結果伝わりづらいというのはもったいないことです。だから、頭を整理するために1回紙に落としてみます。そのためには語彙を増やし、言葉を勉強しなくてはなりません。まだ全然できていませんが、そういうチャレンジを積み重ねて、自分の対話の質を上げてもっと伝わる力をつけていこうとしています。

言葉は記号のやりとりなので、発信する側と受け取り側の記号が一致しないと、システム的にもエラーが起きてしまう。伝えたように伝わらないのは、往々にして発信側に責があって、『わかっているだろう』では、伝わらないのです。発信者が受け手側の問題とせずに、発信の仕方をいかにあらためるかということを、この研修では気づかせてもらいました。」

DIDビジネス研修で気づくのは「教材はすべて自分の中にある」ということ

――このビジネス研修が、ほかの研修と異なると感じられるのはどのような点でしたか?

石田様:「思考のフレームワーク、マーケティングといったことは一般の研修で学べるし、仕事で活かしやすいものですが、このビジネス研修はそうした外から学び取る概念や理論ではありませんでした。全部自分の中にある課題というか、教材は、自分の外側ではなく自分の中にある、とわかりました。

今後に向けて、経営職以外の社員にも研修を受けてほしい

――暗闇ではニックネームで呼び合い、姿が見えなくなる分、普段の上下関係がなくなりますが、明るい世界に戻ってからはいかがでしたか?

浄弘様:「たしかに、暗闇の中で親しくなった感じは、明るい所に戻ると肩書きや仕事上の関係に戻ってはいくのですが、ただ、こんな人柄だったなという印象は残っています。あのとき優しくしてくれたな、こんな人だったなという気づきがあることによって、付き合い方の変化はあるんじゃないかと思います。」

石田様:「私が参加したのは、社長と経営統括本部、公共事業本部、エンタープライズサービス事業本部の本部長と本部長代理というチームでしたが、もともとそんなに壁はありません。通常から三本部情報連絡会で本部間の課題を共有し合意形成する時間を設けていて、社内の各部門でということではなく、富士フイルムシステムサービス全体としてどうあるべきかという議論をしています。ですから、研修後、特別に壁が取り払われたという感覚はありません。暗闇での共通体験をしたという思いはありますが。逆にいえば、それは今、会社が良い状態になっているということでもあります。ふだんから相手のことを理解しようとし、“自分最適”ではない考え方をする人が多く、人の話をしっかり聞き、伝えるべきことを伝える、課題解決のために全力で動こうとしています。
だからこそ、今度は課長層や新しくマネジメント職に就く人にも、この研修を受けてもらいたいし、何かしら気づくことがあるだろうなと思います。」